秋は夕暮

残暑…とは言いますがまだまだ暑い日が続きますね。
あっという間に夏が過ぎ去ってしまいました。

さて、9月に入り秋と聞いて何が浮かぶかな~と考えてみたのですが、その時頭に浮かんだのは枕草子の一節
「秋は夕暮~」でした。
学生の頃に授業で習った覚えはあるのですが、秋は夕暮の続きはなんだったかなと調べてみました。

「秋は夕暮。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛びいそぐさへあはれなり。まいて雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず」

これを現代語に訳すと

「秋は夕暮れが良い。夕日がさして、山の端に落ちかかるころに、カラスが寝所へ帰ろうとして三羽四羽、二羽三羽と、急いで飛んでいく様子は、しみじみとして趣がある。まして、カリなどが連なって飛んでいくのが、とても小さく見えるのは、非常にすぐれていて素晴らしい。日がすっかり沈んだあとの、風の音や虫の声など(の趣のあることは)、さらにまた言うまでもない。」

オレンジ色の夕日を背景に黒いカラスが連なって帰っていく姿、遠くへ飛んで小さくなっていく雁、しんとした暗闇の中で聞こえてくる風の音やたくさんの虫の鳴き声…文章だけで情景が思い浮かんできます。秋はさみしさがよく似合う季節ですね。

私は秋の夕方、窓を開けて生ぬるい風を受けながら近くの学校から聞こえてくる部活の掛け声を聴くのが好きでした。何とも言えないさみしさが妙に心地よかった思い出があります。

夏の暑さで疲れも溜まっている頃。
一度立ち止まって日本ならではの秋の夕暮にゆっくり浸ってみるのはいかがでしょうか。
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